それを見たとき、最初に思い浮かんだのが♪雨上がりの道を～傘さして歩いた～水鏡に映そう～幼い子供みたいに～♪というMISIAの「包み込むように」の歌詞だった。水鏡ってつまり、水たまりのことだよな。あれは雨が降ったからできたんだよな、きっと。そうそう、水たまりに自分の姿を映してね、そこに長くつ履いた足をばしゃんと入れるのが楽しかったな。なのにどうして、雨なんか降ってないのに水たまりがあるんだろう。しかもこんなところに。トイレのタンクの下に水たまりができてる…？ナゼ？自分の姿を映したくてもタンクが邪魔でできないし、素足だから水たまりにバシャンだってできないというのに。でもよくよく見たら、その水たまりにときどき滴が落ちては輪っかが広がっていく。ということはつまりこれは…水漏れですな。

私は一度リビングに戻り、温かい緑茶を入れた。一口飲んでから考える。あれは水たまりではなく、水漏れだから、さあどうしよう…。とりあえずアパートの管理会社に電話して報告しますかね。今日は予定がなくてよかった。といっても明日も明後日も、予定はないんですがね。求職中の身にとっては、修理代を請求されたらつらいとこだけど、賃貸だからきっと大家さんが出してくれるでしょう。

窓には一面の青空が見える。あぁ、雨降ってくれないかなあと私は思った。何だか無性に、水たまりに足を突っ込みたくて仕方がなくなってきたのだ。だけどきっと、明日も明後日も晴れるだろう。

私はのろのろと体を起こし、管理会社の電話番号を押し始めたのだった。